1994年出版の書籍『こころと治癒』(ビル・モイヤーズ著、小野善邦訳、1994年9月、草思社)には、米国のジャーナリスト、ビル・モイヤーズが、著名な医師や科学者11人にインタビューした内容がまとめられています。その中で、「すべての細胞にこころがある」、「感情が健康を左右する」、そう語ったのは、米国の女性科学者キャンディス・パート。人の脳やからだのなかに麻薬レセプター、その他のペプチド・レセプターを数多く発見し、こころとからだの間を行き来する化学物質の研究に貢献された方です。
博士の印象的な語りを以下に記しました。
・感情を伝える化学物質とその化学物質のレセプター(受容体)は、脳内だけでなく、からだのほとんどあらゆる細胞の中で見つかっている。
・私はこう感じていると知覚できないレベルの感情のメッセージも、身体のなかのあらゆるものが機能するために使われている。
・感情の抑圧は病気の誘因となりうる。原住民文化の治癒に共通しているのは、カタルシス、つまり、感情を完全に発散することだ。
どんな小さな感情も、抑圧し続けると体のすべての細胞に蓄積され、やがては病気の原因となる。治療や予防には、カタルシス、感情を解放していくことが大切だと博士はおっしゃっています。
涙を見せない、愚痴をこぼさない、本音を言わず、我慢し続けるなど、ひょっとしたら、心理的なブロックがあって、本当に感じにくくなっているのかもしれませんが、いずれにせよ、放っておくわけにはいきません。なぜなら、同時にこころやからだのどこかにひずみが生まれるからです。
まずは、自分のこころの動き、感情を認めること、そして、できれば感情を言葉にしたり、行動で表わしていくことが大切です。東洋医学では、「肝は怒りの臓器」など、感情と臓器の関係性を説かれますが、日々、心の浄化に努めることが心身の健康につながっていきます。
よく映画などを観てすぐに泣いてしまう人がいますが、映画の登場人物に感情移入したり、素直に感動を表すことができるのであれば、自分と親和性を感じる作品に触れていくことも助けになると思います。
ブログでご紹介した書籍は、28年前に日本で出版されたもので、情報として古すぎると思われるかもしれません。しかし、その市民権は揺るがないものと思っています。何年か前、NHKで人体の巨大ネットワークを紹介する番組がありましたが、そのネットワークに感情が組み込まれていてもおかしくはないはず。
体はとても正直、心の鏡だとあらためて思います。